2006年03月20日

57:神様



何処までも優しくなれるのなら、きっと世の中に神様なんていらない

そう呟いて、ロザリオを首にかけた君は一体どんな顔をしてたんだろう
僕には見つめる勇気がなかった
足元を浚うように引く水の感触にただ泣きたくなった


僕は、
神様を、
ここに、
捨てた











神様には三つの意味がある

彼はいつか僕にそう教えてくれた
どんな意味があるのか、という問いには答えてくれなかった
まずは自分で考えろというのが彼の口癖
僕は神様なんて信じていない
だから意味なんて考えた事も無かった
どれだけ考えても僕の中からは何も搾り出すことはできない
そう言って答えを強請る僕を嘲笑うかのように、彼はロザリオを僕の首にかけた

それを捨てる時がきたら教えてやるよ

今すぐ捨てる事も出来た
捨ててやろうと思った
そうすれば答えが手に入る
単純な頭にはそれしかなくて、僕は家を出て走った
神様を捨てるならそこしかないと、何故か思っていたから
潮の香りが鼻をつき眉間にシワを寄せる
首にかかった鎖を外し、手の平に圧し掛かるような鈍い重みに更に不快感が増した
波間に投げ捨てるのに躊躇はなかった
放物線を描いて消えた銅色に光るそれ










神様は消えた










ねぇ、僕はその時何を思った


今こうして引きずり込もうとする水に浸りながら
思い出すのは彼のことだけ
僕が捨てたのは神様だ
僕だけの神様だ
彼が最期にくれた、僕の神様
僕の神様がくれた、最期の彼


神様の意味が分かったよ


そう言ったら、彼は笑ってくれるだろうか


もういない、僕の神様は

僕を幸福にしてくれるだろうか


ねぇ、神様

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posted by 緑葉 at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 100題 | 更新情報をチェックする
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